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タクシードライバー

この前、モデルちゃんを送る為タクシーに乗った。彼女が降り、私も我が家まで送ってもらう事にした。運転手さんは、私が一人になったので話し掛けてきた。

彼は昔フランスにも良く行ったらしい。どうやら数十年前に公安の仕事をしていたとかで、4カ国語程の語学の才能で、冷戦時代は、アジアを中心に世界中を飛び回っていたのだ。
当時は海外旅行もまだ珍しい頃。ドイツが東西に分裂している頃、東にも西にも何度も足を運んでいる貴重な経験者。あの当時、入国が一番難しかったのはミャンマーだそうだ。

私はその世界に興味があり(同世代の女友達と比べては、少しは詳しい位だけど)、色々聞きたくて家までの残り数分を逆算しはじめた。が、同時に彼はある事情で、彼自身が続けられなくなってしまった事を話始めた。詳しくは語らなかったが、ある事情とは、人間性を問うほどの出来事だったのだろう。そして、組織や世間とは離れて生きていける個人タクシーの運転手の道を選んだのだろう。この個人タクシーという職業が、辞める理由の重さを感じてしまった。私が本で読んだモサドのスパイが語った事を思い出した。今、お話している目の前の人が、本の中だけの出来事を語ってくれたのは、嬉しかった。私は単純に生まれ変わったらなりたい職業の3位以内にしていたが、いざ事の重大さを伺うと、常に裏舞台で地味に活動して、時には人を騙したり(想像し過ぎ?)、家族にも負担をかけたりすると思うと、ロマンも美しいばかりでないのだ。

聞きたい事も聞けなかったが、昔を懐かしく語る運転手さんは、とても穏和な方に見えた。当時は思い出すのも嫌だったのだろうが、時間がそれを和らげてくれたのかもしれない。時間の流れは良くも悪くも、人の感情を忘れさせてくれるものだと、改めて思ったのでした。
by maischaud | 2005-07-19 11:03
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